2013年09月12日

星野富弘さん 4


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 新幹線が東京駅に着いた。
名古屋からの移動の中で自分に問うていた事がある。
(これからどうする)
このまま、おめおめと家には帰れない。
東京で住み込みで働ける場所を探そう。
でも、仕事ってどうやって探すのだ?
街を歩き回れば、『従業員募集』の張り紙があるのではないか?
兎に角、家には帰れない。
この決意を母親には伝えよう。
10円玉と100円玉を握りしめて
公衆電話のボックスに入った。
ワンコールで母が受話器を取ったようだ。
「あ・・・俺・・・」
「バカな事を考えないで、直ぐに返って来い!」
母には全てお見通しだった。
仕方が無い。取りあえず帰ろう。
会社が用意してくれた電車は急行の夜行列車だった。
寝台はないのでボックスシートに丸くなって眠った。

最寄りの駅に着くまで一度も目を覚まさなかった。
人生最大の衝撃的な出来事があったばかりなのに
ぐっすり眠れる自分に自己嫌悪を覚えた。
家の近くまで来るとたじろいでしまった。
(どうかご近所さんに逢いませんように)
しかし、お向かいさんに逢ってしまった。
「んん?あれぇ?」
「お、おはようございます」
急いで家に逃げ込んだ。
母が玄関で立っている。
いつから立っていたんだろうか。
「お帰り。ご飯だよ」
「あ、うん・・・」
部活から帰って来た時と同じように迎えてくれた。
父も姉も仕事に出ていた。
「おカァ、仕事は?」
「休んだ」
食卓にあった焼き魚に湯気の立ったご飯と味噌汁が添えられた。
「お前、朝ご飯を食べたら、高校へ行って謝ってきなさい」
私は、母親には怒られた事が無い。
この時も怒っている様子は無かった。
朝ご飯の食べ終わると、高校へ向かった。

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posted by アズキパパ at 11:35| Comment(4) | TrackBack(0) | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年09月04日

星野富弘さん 3


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 どれ位の時間を正座で上司の話しを聞いていたんだろうか。
人生論やここで辞める事の影響の話しを延々としてくれている。
一人の上司が部屋を出て行った。
(トイレだろうか)
暫くすると、その上司が帰って来た。
「今、君のお母さんに電話をしてきたよ」
一番、辛い状況がやってきた。
入社式に臨む為に最寄駅から電車に乗った時に
ホームには両親と姉が見送りに来ていた。
母は、電車が出発をする事を告げる音に
顔をくしゃくしゃにして一言、
「元気でね」と呟くように言った。
バックの内ポケットには近所や親戚がくれた餞別・・・
「お母さんは、出来る事なら説得をして留まらせて欲しい。
でも、どうしても駄目なら申し訳ないけど返して下さいと
言っていたよ。どうする?」
もう自分が居る資格のない会社だと決めてしまったのだ。
「すみません」
こう言って、畳に額を落とした。

 それから1時間後、私は荷物を纏めて会社が手配してくれた
秋田までの切符を持って、タクシーに乗り込んだ。
自分で決めた事なのに、敗北感で一杯だった。
名古屋駅から新幹線に乗ると、向かいには
化粧の派手なオバサンが座っていた。
オバサンはフレンドリーな方のようで、速射砲のように話し掛けて来る。
「こんな時期に旅行?いいわねぇ、若い人は自由で」
「・・・・」
一言も話しをする気にはなれない。
私は猛スピードで流れる外の風景の方向に目をやったきり
顔を正面には向けなかった。
それでもオバサンは勝手に喋り続けている。
私にとってはこの状況が悲しくて堪らなくなった。
無意識なまま涙が一筋流れた。
オバサンは、黙ってしまった。

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posted by アズキパパ at 11:21| Comment(2) | TrackBack(0) | ペット | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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